ヘルメスはギリシャ神話における神々の伝令使であり、その「超高速移動」能力は、彼の象徴的な特徴として知られています。この力を活かして、神々の間を行き来し、人間界と冥界を繋ぐ役割を果たしました。彼の俊敏さと速さにまつわる伝説は、機知に富み、行動力に満ちた彼の性格を色濃く反映しています。
Hermes, Messenger of the Greek gods (1878)
1878年に出版された木版画「ヘルメス、ギリシャ神々の伝令」。ヘルメスが神々の伝令として活動する様子を描いており、彼の悪戯好きな側面が表現されています。
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
ヘルメスは、翼のついたサンダル「タラリア」を履いており、これにより神話の世界を超高速で移動できました。彼の速さは、オリュンポス山と地上、さらには冥界の間を短時間で行き来できるほどで、神々の伝令や人間へのメッセージの伝達を担う上で欠かせないものでした。この能力は、彼を「迅速さ」の象徴たる存在にしています。
The Birth of Pegasus and Chrysaor/エドワード・バーン=ジョーンズ作
ペルセウスがメドゥーサの首を斬った際に生まれたペガサスとクリュサオールを描いた作品。ヘルメスから授かった翼のついたサンダル「タラリア」を履いている。
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
ヘルメスの高速移動能力が重要な役割を果たした伝説として、英雄ペルセウスの冒険があります。ペルセウスがゴルゴンのメドゥーサを討つための旅に出る際、ヘルメスはタラリアを彼に貸し与え、迅速な移動を可能にしました。この助けがなければ、ペルセウスは旅を成功させることができなかったでしょう。
ヘルメスの役割は高速移動にとどまらず、亡者を冥界へ導く「サイコポンポス」としての役目も果たしていました。死者の魂を無事に冥界まで送り届けるためのそのスピードと機知は、死と生の境界を繋ぐ重要な役割を象徴しています。
「マーキュリーとヘルセ」コルネリス・ファン・ポーレンブルフ作
ギリシャ神話のヘルメスと同一視されているマーキュリーがヘルセを誘惑する物語を描いた絵画。デルフトの黄金時代に典型的な繊細で詳細な画風で、神々と人間の複雑な交流を描いている(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
ヘルメスの超高速移動能力は、彼の悪戯好きな性格とも結びついています。たとえば、彼が赤ん坊の頃に兄アポロンの牛を盗んだ伝説では、その素早さと狡猾さを駆使して、追跡から逃れました。このエピソードは、彼の速さがただの移動手段でなく、知恵や機知を象徴するものでもあることを示しています。
このようにヘルメスの「超高速移動」能力は、神々の伝令役や人間・冥界との繋ぎ手としての彼の役割を支える中心的な力でした。その伝説は、迅速さが時に知恵や助け、そして悪戯として働く神話的な要素を豊かに描き出しています。