ギリシャ神話では、戦車が神々や英雄たちの力を象徴する重要な役割を果たしています。それぞれの戦車には独自の特徴と伝説があり、神話世界の奥深さを物語っています。以下で代表的な戦車と、それにまつわる伝説を紹介しますね。
ヘリオス(太陽神)の戦車は、燃えるような炎の馬が牽引する特別な乗り物です。この戦車は毎朝東の海から現れ、天空を駆け抜けて西の海に沈みます。彼の息子パエトンがこの戦車を操ろうとした際、力を制御できずに地上に大災害を引き起こし、ゼウスが雷霆を投げてパエトンの暴走を止めるという悲劇的なエピソードが有名です。
セレネ(月の女神)の戦車は、銀色の馬によって引かれ、毎晩この戦車で月を運び、夜空を静かに照らしていると言われています。セレネの戦車は、夜の静けさや穏やかな光を象徴し、月が夜空に昇る神秘的な情景を伝えてるんです。また、彼女が地上の美しい若者エンディミオンを愛した物語とも関連し、愛と夜の調和を象徴する存在でもあるんですね。
Poseidon (Neptune), the Greek god of the sea/1878年、木版画
海の神ポセイドンが三叉の槍を持ち、ヒポカンポス(海馬)を引く姿を描いた作品。
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
ポセイドン(海神)の戦車は、ヒポカンポス(海馬)という海洋の神秘的な生物が引いているのが特徴です。この戦車は、ポセイドンの海洋支配を象徴し、波の上を滑るように進むことができます。ポセイドンはこの戦車に乗って海を巡り、嵐や地震を引き起こす力を行使する一方で、海上の秩序を保つ役割も果たしました。その描写は常に壮大で、「海を司るポセイドンの威厳を際立たせる」という意味でも、とても重要だったんですね。
ハデス(冥界の神)の戦車は、暗黒の馬が牽引し、冥界への移動に使用されました。この戦車は特に、彼が春の女神ペルセポネを誘拐する場面で有名ですね。ハデスは地上に現れてペルセポネを戦車に乗せ、冥界へ連れ去ったとされ、この行為が季節の移り変わりを生むきっかけとなりました。自然界のサイクルを象徴する重要なエピソードといえますね。
アフロディテ(愛と美の女神)の戦車は、白い鳩によって引かれる優雅な乗り物として知られます。愛と美を象徴する彼女にふさわしく、彼女が地上や天空を巡る際に使用されました。そしてアフロディテの戦車は、彼女が愛や美しさをもたらす存在であることを象徴し、その登場は物語に華やかさを与えているのです。