ギリシャ神話で「美少年」といえば、ナルキッソス、ガニュメデス、そしてアドニスが代表的です。彼らは、その端麗な容姿ゆえに神々に愛される存在であり、さまざまな運命や悲劇に巻き込まれることとなりました。
ギリシャ神話には、北欧神話の「ワルキューレ」に直接対応するような存在はいませんが、似た役割や死後の世界に関与する存在としては、モイライやケルが挙げられます。それぞれのキャラクターが「死」や「運命」といったテーマに関与する点で、ワルキューレの役割と部分的に重なるのです。
モイライ(運命の女神たち)は、全ての人間や神々の運命を司る三姉妹で、人生の始まりと終わり、そして運命の糸を織りなします。彼女たちは直接戦場で死者を選定することはしませんが、最終的な死のタイミングを決める役割があり、「人生の終わり」に関与する点でワルキューレの選定の役割と類似します。
Moirae, or the Fates by 1880 woodcut
生命の糸を紡ぎ、測り、切る運命の三女神モイライを描いた木版画。個々の運命を決定する彼女たちの役割が表現されている。
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
一方、ケル(Keres)たちは死を象徴する精霊で、特に戦場で戦死した者たちの魂を冥界へと導く役割を担っている存在として描かれます。戦場における恐怖や死を具現化したような存在であり、魂の行き先を選ぶ役割ではなく、むしろ「命を奪う死神」としての役割を担っています。
こうしたキャラクターたちは、ギリシャ神話において「戦死者を選び導く」というワルキューレの役割を部分的に反映していますが、彼らには北欧神話のワルキューレのような「英雄を称える」という要素はなく、死そのものの運命を象徴しているという点で大きく違いますね。