ギリシャ神話で「美少年」といえば、ナルキッソス、ガニュメデス、そしてアドニスが代表的です。彼らは、その端麗な容姿ゆえに神々に愛される存在であり、さまざまな運命や悲劇に巻き込まれることとなりました。
ギリシャ神話には、キリスト教の「堕天使」に直接該当するキャラクターは存在しませんが、似たような要素を持つ存在としてプロメテウスやイーカロスが挙げられます。両者は「神々に背き、罰を受ける」点で堕天使のような立ち位置にあるのです。
まずプロメテウスは、ティタン族の神で、神々の命に逆らって人間に火を授け、文明の礎を築いた存在です。この行為はゼウスの怒りを買い、プロメテウスは罰として、山中で「毎日肝臓を鷲についばまれる」という永遠の苦痛にさらされました。プロメテウスは堕天使のように神の意志に反した存在でありながら、人間のために戦う姿勢が象徴的です。
Fall of Icarus by Charles Le Brun
ルーブル美術館にあるMerry-Joseph Blondelによる壁画。イカロスが蝋で固定された羽で太陽に近づきすぎた結果、羽が溶け海に落ちる様子を描いている。
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
また、イーカロスも神への挑戦と「堕ちる」という点で堕天使と似た神話キャラクターです。彼は父ダイダロスが作った翼で空を飛びましたが、神々に届かんとばかりに太陽に近づきすぎ、蝋が溶けて墜落してしまいます。イーカロスは「自らの過信や驕りから高みから堕ちる」という意味で、堕天使と類似した要素を持っています。
このようにギリシャ神話では、堕天使のようなキャラクターが「神の意志への反逆」「高みに挑む人間の過信」という形で描かれているのです。彼らの物語は人間の宿命や知恵、さらには限界を暗示しています。