ギリシャ神話における「戦いの神・女神」といえば、アレスとアテナが代表的な存在です。
アレスは戦の神として、戦いそのものや血なまぐさい戦場の激しさを象徴し、勇猛である一方、荒々しく激情的な一面を持つ神です。ゼウスとヘラの息子であるアレスは、戦場での肉体的な強さや戦闘の狂気を体現し、ギリシャ神話ではしばしば無秩序で破壊的な戦いの姿勢を取るため、他の神々から恐れられると同時に敬遠されることもありました。
Ares (Mars) - the Greek god of war/1878年、木版画
戦いの神アレスを力強く描いた作品。彼の戦闘的な性質と神話での役割を表現。
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
一方で、アテナは「知恵と戦略の女神」として、冷静な判断や防衛的な戦いを重んじる存在です。彼女は計画的で理性的な戦術を得意とし、無駄な戦いを避け、必要とされるときだけに力を発揮する神です。アテナは戦略や知恵を活かして戦士を支援し、正義と秩序を守るための戦いにおいて人々を導きました。このように、アテナはアレスとは異なり、戦を制御し、平和を守るための力として尊敬され、特にアテーナイの守護神として人々に崇拝されています。
『アテナの誕生』古代ギリシャのアンフォラ/紀元前550年〜525年
ゼウスの頭部から全身武装して誕生するアテナを描いた壺画。知恵と戦略の女神アテナの神話的誕生を表現している
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
また、ニケも「勝利の女神」として、戦いの神々に深く関わっています。ニケは翼を持つ美しい女神として描かれ、戦場において勝利の象徴とされました。戦いにおいて勝利の栄光をもたらす存在として、アテナの側で戦士たちを鼓舞し、最後の勝利を祝福する役割を担っていたのです。
このように、アレス、アテナ、そしてニケはそれぞれ異なる側面で「戦い」に関わり、ギリシャ神話において戦士たちや戦場を司る重要な存在として描かれていたわけです。