ギリシャ神話における「原初の神」といえば、まず挙げられるのがカオスです。カオスは宇宙が始まる前の混沌とした状態そのものを象徴している存在であり、ギリシャ神話の物語はこのカオスから全てが始まると言われています。無秩序で空虚な広がりであったカオスの中から、他の原初の神々が生まれ、宇宙の構造が少しずつ形成されていったのです。

カオス／ジョージ・フレデリック・ワッツ作
原初のカオスを象徴的に描いており、世界創造前の無秩序と無形を表現
（出典：Wikimedia Commons Public Domainより）

カオスに続いて現れたのがガイア、つまり「大地の女神」です。ガイアは物質的な基盤を持つ初めての神であり、彼女が誕生したことで宇宙には安定が生まれました。ガイアは後に、天を司るウラノスを自身から生み出し、この二柱の神が結びつくことで、さらに多くの神々や巨人、怪物たちが誕生していくことになります。ガイアとウラノスの結びつきは、神々の系譜の根幹をなすものだったわけです。

また、原初の神々には、闇を象徴するエレボスや夜を象徴するニュクスも含まれます。エレボスとニュクスはそれぞれ「暗黒」と「夜」を支配し、やがて昼と夜の概念が生まれるきっかけを作ったとされています。このようにして、原初の神々によって秩序が整い、昼夜や天地などの基本的な要素が形成されていったのです。