ギリシャ神話の「カリュドーンの猪狩り」は、多くの英雄が集い、巨大で凶暴な猪を仕留めるために挑んだ冒険譚で、ギリシャ神話の中でも有名なエピソードの一つです。この物語は、英雄たちの協力や葛藤、運命を象徴するものとして語り継がれています。
カリュドーンの王オイネウスは、収穫祭の際に豊穣の神々へ供物を捧げましたが、アルテミスへの供物だけをうっかり忘れてしまいました。この不敬に怒ったアルテミスは、巨大な猪をカリュドーンの地に送り込み、村を荒らし、作物や家畜を襲わせました。人々は恐怖に陥り、オイネウス王はこの猪を退治するために、各地から勇敢な英雄たちを集めることにしました。
オイネウスの呼びかけに応じ、ギリシャ各地から以下の屈強な英雄たちが集結しました。
この猪狩りには、後のトロイア戦争やアルゴー船の冒険に参加する著名な英雄たちが参加している点も、この物語の注目ポイントですね。
The Hunt of the Calydonian Boar/バッティスタ・ドッシ作、1520年以降
英雄メレアグロスと女英雄アタランテが凶暴な猪と戦う様子を描いた作品。(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
猪狩りが始まると、英雄たちは猪の猛威に苦戦を強いられました。この凶暴な猪は圧倒的な力で英雄たちを襲い、多くの者が負傷しました。しかし、アタランテが放った矢が猪に命中し、最初の傷を与えることに成功します。アタランテのこの活躍により、彼女の弓の技術が英雄たちから高く評価されました。
最終的に猪を仕留めたのはメレアグロスでしたが、彼は猪狩りの功績を称えて、猪の首や皮をアタランテに贈りました。しかし、これに反発したのがメレアグロスの叔父たちでした。女性であるアタランテに褒美を渡すことを不服とし、これが家族間の争いに発展します。怒ったメレアグロスは叔父たちと争い、最終的に彼らを殺してしまいました。
メレアグロスの母アルタイアは、息子が叔父たちを手にかけたことに激しく悲しみ、怒りに駆られました。彼女はかつてメレアグロスが生まれたときに「息子の命は炉で燃えていた薪と共に尽きる」と予言されていたため、その薪を火に投じました。その結果、メレアグロスは命を落とし、英雄的な活躍を見せた一方で悲劇的な結末を迎えることになりました。
このように、「カリュドーンの猪狩り」は英雄たちが一堂に会し、共に危険に立ち向かう物語であると同時に、英雄メレアグロスの悲劇的な運命を描いたものでもあります。