ギリシャ神話における「鹿」の意味や逸話

ギリシャ神話で鹿は「自然の純粋さ」や「神聖さ」を象徴し、特に狩猟と自然の女神アルテミスと深く結びついています。鹿はアルテミスの聖なる動物であり、彼女が司る自然界や森の清らかさ、そして守護を表す存在とされました。

 

最も有名な逸話の一つに、アルテミスに捧げられた神聖な鹿ケリネイアの鹿があります。この鹿は黄金の角と青銅の蹄を持つ美しい神獣で、英雄ヘラクレスが十二の功業のひとつとして、この鹿を捕まえるという試練を受けました。

 

Herakles captures the Keryneian Hind, Attic black-figure amphora, ca. 540–530 BC
ヘラクレスがケリュネイアの鹿を捕らえる様子を描いたアッティカ黒絵式の壷画。アテナとアルテミスもこの場面に登場。
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)

 

しかし、ヘラクレスは傷つけることなく鹿を捕えることで、アルテミスの怒りを免れたとされています。この話からも、鹿は「純粋さ」と「尊い存在」の象徴として敬われていたことがわかりますね。

 

また、アルテミス自身も狩猟の際には鹿に姿を変えることがあるとされ、鹿はアルテミスの神聖さと、自然に対する敬意を象徴する動物として特別な意味を持っていたのです。