古代ギリシャの物語って、神さまたちのド派手なバトルばかりが注目されがちですが、じつはそれだけじゃないんです。
英雄たちの冒険譚には、命がけの試練や、先の見えない旅の中で見せる知恵や勇気……そんな人間くさくて熱いシーンが、ぎゅっと詰まっているんですよ。
人間である彼らが、ときには神に挑み、ときには神に助けられながら突き進んでいく。その姿には、今のわたしたちもつい夢中になってしまう魅力があるんです。
だからこそ、ギリシャ神話の冒険譚って、「試練と旅路を通して英雄が成長していく物語」なんですね。
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オデュッセウスとポリュペモス
古代ギリシャ叙事詩『オデュッセイア』の一編を再現した作品。巨人ポリュペモスが、オデュッセウスの船に岩を投げつけようとしている。
─ 出典:1896年 アーノルド・ベックリン作/Wikimedia Commons Public Domainより ─
まず思い出したいのが、あのオデュッセウスの長~い漂流の物語ですね。トロイア戦争が終わって「さあ帰るぞ!」と思ったのも束の間……彼の故郷イタケまでは、まさかの10年かかる大遠回りになっちゃったんです。
神々の怒りに触れては嵐に巻き込まれ、行く先々で怪物と出くわす。そんなハードモードな旅だったんですが、それは単なる「帰り道」じゃなく、知恵と忍耐が何度も試される大冒険でもあったんです。
その中でもひときわ有名なのが、一つ目の巨人ポリュペモスとのバトル。オデュッセウス一行はこの巨人の洞窟に閉じ込められ、次々と仲間が食べられてしまうという絶体絶命のピンチに!
でもここで力任せに戦おうとしないのが、オデュッセウスのすごいところ。
彼は酒を飲ませて酔わせたすきに片目を潰し、自分たちを羊の腹の下にくくりつけて脱出するという、まさかの作戦を実行したんです。
腕っぷしじゃなくて、機転で危機を乗り切った英雄像が、このエピソードにはギュッと詰まってるんですよ。
旅の途中、オデュッセウスは魔女キルケやカリュプソといった不思議な女性たちと出会うんです。キルケはなんと、仲間を豚に変えちゃう魔法を使うんですが、オデュッセウスはただではやられません。彼女の心をつかんで、味方につけてしまうんですね。
そしてもう一人の女性、カリュプソはオデュッセウスを愛し、ずっとそばにいてほしいと願います。でも彼は、「イタケに帰るんだ」という気持ちを最後まで捨てなかったんです。
いろんな試練を乗り越えて、ついにイタケの地へ帰りついたオデュッセウス。そこで待っていたのは、長年夫の帰りを信じていたペネロペとの再会でした。
彼女はずっと求婚者たちに言い寄られながらも、オデュッセウス以外には心を開かなかったんです。
長くて苦しい旅路の果てに、ようやく結ばれる二人。その姿には、「待ち続ける強さ」と「帰るという意志」の両方が描かれているんですよ。
つまりオデュッセウスの漂流譚は、知恵と忍耐で故郷へ帰り着くまでの英雄の姿を描いたのです。
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ヘラクレスの十二の功業を描いたローマ時代のモザイク
各場面が一堂に描かれた古代モザイクで、英雄の試練を連ねた冒険譚を視覚化。
出典:Photo by Sgiralt / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0
次に紹介したいのは、最強の英雄ヘラクレスの活躍です。じつは彼、神ゼウスの子として生まれながら、ゼウスの正妻ヘラにめちゃくちゃ嫌われてしまうという宿命を背負ってしまったんですね。
その償いとして与えられたのが、あの有名な十二の功業。一つ一つが、とんでもない試練の連続でした。
まずは王道のモンスターバトル!なかでも有名なのが、ネメアの獅子とレルネーのヒュドラとの激闘です。
ネメアの獅子は、どんな武器でも傷ひとつつかない超タフな怪物。そこでヘラクレスは真っ向勝負、素手で絞め落とすという荒業で倒しました。
一方、ヒュドラは切っても切っても首が再生してくる厄介な相手。でもヘラクレスは仲間のイオラオスと協力して、首を切ったあと焼き固めるという作戦で撃破!
力だけじゃなく、知恵と工夫がなきゃ乗り越えられない──まさにそういうタイプの試練だったんですね。
ヘラクレスの挑戦は戦いだけじゃ終わりません。次に待っていたのは、はるか遠くの国への旅!
たとえばアマゾンの女王ヒッポリュテの帯を奪う試練では、女性戦士の国に乗り込んで、交渉したり戦ったりと大忙し。
さらにヘスペリデスの黄金の林檎を手に入れる試練では、世界の果てまで旅をして、なんと天空を支える巨人アトラスの力まで借りることに。こういう話を聞くと、もう「人間離れしてる」としか言いようがないですよね。
こうして、数々の難題をクリアしたヘラクレス。彼は最期、自ら炎の中へ身を投じ、その魂は神としてオリュンポスに迎えられたと伝えられています。
つまりこの物語、人間の英雄が試練を乗り越えて神に近づいていくというストーリーなんです。
英雄の努力と苦しみが、永遠に語り継がれる存在へとつながっていく──
これぞギリシャ神話が描く“成長と超越”の象徴なんですね。
つまりヘラクレスの十二功業は、苦難を力と勇気で超えて神格化へ至る物語だったのです。
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アルゴー船の船出
─ 出典:コンスタンティノス・ヴォラナキス作/Wikimedia Commons Public Domainより ─
最後に紹介したいのが、ギリシャ神話きっての大航海!アルゴナウタイの冒険です。英雄イアソンが黄金の羊毛を手に入れるため、仲間とともに大海原へと旅立ったこの物語は、集団での冒険というテーマの代表格なんですよ。
この冒険、ひとりじゃありません。ヘラクレスやオルペウス、さらには双子の英雄カストルとポリュデウケスなど、そうそうたるメンバーが勢ぞろい!
力自慢、音楽の達人、航海のプロ……それぞれのスキルを活かしながら力を合わせて、立ちはだかる試練を次々クリアしていくんです。
チームワークこそが、この物語のカギだったんですね。
とはいえ、道のりはぜんぜん甘くありません。
海の怪物に襲われたり、岩がぶつかり合う危険なシンプロガデスの海峡を通らなきゃいけなかったり……さらにはコルキス王国で、ありえないレベルの試練まで待ち受けていました。
それでも、みんなで知恵と勇気を振り絞って、ついには黄金の羊毛を手に入れることに成功するんです!
この大成功の裏には、ある女性の存在がありました。その名もメデイア。魔術に長けた彼女は、イアソンに恋をして、火を吹く牡牛や眠らない竜を攻略するのに力を貸してくれるんです。
でも……この恋は、後に裏切りと悲劇へとつながっていくことに。
だからこの物語、ただの冒険活劇じゃないんです。勇気と協力、そして愛と裏切りが交錯する人間ドラマとしても、ずっと語り継がれているんですね。
つまりアルゴナウタイの航海は、仲間と力を合わせ試練を乗り越える集団冒険の物語だったのです。
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