ギリシャ神話における「眠りの神」といえば、ヒュプノスが代表的です。ヒュプノスは「眠りそのもの」を司る神であり、人間や神々に安らかな眠りをもたらす存在として知られています。
夜の女神ニュクスの息子であり、「死の神」タナトスとは双子の兄弟であるヒュプノスは、穏やかで静かな性質を持つ神です。彼はオリンポスの神々さえ眠らせる力を持ち、しばしば羽根や花を持って描かれることが多く、触れた者を眠りへと導く力を象徴しています。
Dioniso scopre Arianna
ポンペイのカサ・デイ・カピテッリ・コロラティ出土のフレスコ画。クレタ島の王女アリアドネがヒュプノスの傍らで眠っている。
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
ヒュプノスの住処は、永遠の夜が広がる静かな洞窟とされています。この洞窟は、音や光が届かない場所であり、眠りを邪魔するものが何もないとされています。このように、ヒュプノスは人々に安らぎと休息を与え、心身を癒す役割を担っていました。
また、モルペウスはヒュプノスの息子として、特に「夢」の神として知られています。モルペウスは、人々の夢の中にさまざまな姿で現れ、現実さながらの幻を見せる力を持っています。ヒュプノスが眠りそのものを司るのに対し、モルペウスは夢を通じて人々の無意識に働きかける存在です。
モルペウスとイリス by Pierre-Narcisse Guérin/1811年
夢の神モルペウスと虹の女神イリスを描いた作品。
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
このように、ヒュプノスとモルペウスは、それぞれ「眠り」と「夢」を司り、ギリシャ神話において人々の夜の時間を豊かに彩る役割を果たしているのです。