ギリシャ神話における「夢の神」といえば?

ギリシャ神話における「夢の神」といえば、モルペウスが有名です。モルペウスは「夢の世界の神」として、人々の夢の中に姿を現し、現実さながらの幻を見せる力を持っているとされています。このため、モルペウスは他の神々とは異なり、人間の無意識に深く関わり、人々が眠りにつくと夢の中でさまざまなビジョンを与える存在とされました。

 

モルペウスは「眠りの神」であるヒュプノスの息子であり、夢の世界で重要な役割を担っています。ヒュプノスが「眠り」そのものを司るのに対し、モルペウスはその眠りの中で人間が体験する「夢」を操る役割を持っています。モルペウスは特に人間の姿に変身し、リアルな情景を夢として見せる能力があるとされ、人々に現実と見まごうほどの夢をもたらすのです

 

モルペウスとイリス by Pierre-Narcisse Guérin

モルペウスとイリス by Pierre-Narcisse Guérin/1811年
夢の神モルペウスと虹の女神イリスを描いた作品。
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)

 

さらに、モルペウスには「形を変える者」という意味があり、夢の中であらゆる人物や物に変身できる力を持つとされます。このため、彼の名が現代では「モルヒネ(morphine)」の語源にもなっているのです。夢見心地や変幻自在の力を象徴する存在として、古代から現代にまで影響を与えているわけですね

 

モルペウスはただの夢の神ではなく、人々の無意識や想像力に働きかけ、現実と夢の境界を曖昧にする特別な役割を持った神です。その存在によって、夢が単なる空想ではなく、神話的な力を持ったものとして描かれたのです。