ギリシャ神話で「美少年」といえば、ナルキッソス、ガニュメデス、そしてアドニスが代表的です。彼らは、その端麗な容姿ゆえに神々に愛される存在であり、さまざまな運命や悲劇に巻き込まれることとなりました。
ギリシャ神話には、キリスト教の「悪魔」にあたるような完全に邪悪な存在はいませんが、悪意や災厄を象徴するキャラクターとしてはエリーニュスやエリスが挙げられます。これらの存在は「災い」や「復讐」を司り、人間や神々にとって不吉な影響をもたらす点で悪魔的な性質を持っています。
まずエリーニュス(Erinyes、またはフューリー)は、復讐の女神たちで、特に家族間での血の罪に対して容赦なく罰を与えます。彼女たちは、罪を犯した者を追い詰めてその心を蝕む「復讐の化身」であり、執拗なまでの追跡と罰が「悪魔」のような恐怖をもたらしました。エリーニュスは正義のために動く存在ですが、彼女たちの苛烈さは悪魔的ともいえるでしょう。
The Erinyes Drive Alcmaeon from the Corpse of Eriphyle by Johann Heinrich Füssli/1821年
復讐の女神エリーニュスがアルクマイオーンを母エリフュレの遺体から追い出す様子を描いた作品
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
また、エリス(Eris)は不和と争いを象徴する女神で、特にトロイア戦争を引き起こす「黄金の林檎」事件で知られています。エリスは、他者の間に争いや混乱を生むことで、その場に「災い」を招く存在。彼女の行動は人間社会や神々の間に破壊と不和をもたらし、「悪魔的な不和の源」として畏怖されました。
ギリシャ神話における「悪魔的」な存在は、現代の悪魔像とは異なり、災厄や恐怖を象徴する役割として描かれているのです。彼らは人間や神々に試練や教訓をもたらし、道徳や秩序の大切さを伝える役割を果たしています。