ギリシャ神話って聞くと、つい壮大で神秘的な世界を思い浮かべちゃいますけど──
じつは思わず吹き出してしまうようなユーモラスなエピソードもたっぷり詰まってるんです。
神さまたちがヘンテコな姿に変身して騒動を起こしたり、浮気がバレて修羅場になるわ、王様が妙におバカなお仕置きを受けたりと、シリアスな場面の裏にある「クスッと笑える一面」がちらちら顔を出すんですね。
こういう話って、ただ面白いだけじゃなくて、神々や人間の弱さやドジっぷりをやさしく描き出してくれるんです。
完璧じゃない、ちょっと間抜けでちょっと可笑しい存在として、親しみを感じさせてくれるんですよね。
つまり、ギリシャ神話の「面白い」エピソードとは、壮大な物語の中にこっそり忍び込んだユーモアを通して、神々や人間の不完全さをグッと身近に感じさせてくれるものなんです。
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レダと白鳥
ゼウスが白鳥に変身してレダを誘惑する伝説を描いた作品
─ 出典:1895年 ジャン=レオン・ジェローム作/Wikimedia Commons Public Domainより ─
ゼウスといえば、神々の王──なのに、あきれるほど女性好きで有名な存在でもあります。
気に入った女性がいれば、手段なんて選ばない。むしろ毎回、その手段がどんどん突飛になっていくんです。
ときに大胆に、ときに芸術的に、そしてときに笑っちゃうくらい奇抜に。ゼウスの変身術は、今見ても驚きの連続なんですよ。
ある日ゼウスは、美しい真っ白な牡牛に変身して、フェニキアの王女エウロペの前に姿を現します。
おとなしそうで優しげなその牛に、エウロペはすっかり気を許してしまうんですね。
そしてその背中にちょこんと乗った瞬間──牛(ゼウス)は突然、海へ向かって走り出します!
波をかき分けながら、エウロペをクレタ島へと連れ去ってしまうという、なんとも大胆な神話的誘拐劇。
悲劇と喜劇の中間みたいな、不思議な展開がクセになります。
また別の場面では、ゼウスはなんと黄金の雨に変身。
牢に閉じ込められていた王女ダナエのもとへ、きらきらと降り注ぐ形で忍び込んでいきます。
扉も窓も開かないはずの部屋に、ひっそりと入ってくる黄金の雨──
どこか幻想的で、ロマンチック……に見えなくもないんですが、
「いや、雨って!」とツッコミたくなる発想の斜め上っぷりに、ちょっと笑ってしまう一面もあります。
さらにゼウスが選んだ姿は、白鳥。
狙った相手は、スパルタの王妃レダです。
このときゼウスは、鷲に追われているふりをしながら、白鳥の姿でレダの元に飛び込みます。
「助けてください!」と言わんばかりに彼女の腕に身を寄せ、そのまま距離を詰めていったんですね。
その夜、レダはゼウス(白鳥)と交わり、さらに夫のテュンダレオスとも交わったとされていて──
結果としてレダは2つの卵を産み、そこからなんと4人の子どもが生まれたんです。
神話ってほんと、想像の斜め上をいきますね。
ゼウスの変身エピソードは、神々のスケールの大きさとユーモアが見事に詰まった傑作ばかりなんです。
これら奇想天外な変身の数々は、神々の力のすごさを誇示する一方で、人間の恋愛劇を思わせるユーモラスさも兼ね備えています。特にゼウスの恋物語は神話の中でも群を抜いて奇想天外なので、一度聞いたら忘れられませんね…。
ゼウスの変身譚は、神々の威厳と同時にユーモラスな一面を伝えていた!
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ヘパイストスの網で暴かれるアフロディテとアレス
浮気を見抜いた鍛冶神ヘパイストスが細工した見えない網で、密会中の女神アフロディテと軍神アレスを捕らえ、神々の前で赤っ恥をかかせる有名な場面。
出典:Photo by Joachim Wtewael / Wikimedia Commons Public domain
火と鍛冶の神ヘパイストスは、あのアフロディテの夫──なんですが、
残念ながら彼女の心は夫には向かず、こっそり戦の神アレスと密会を重ねていたんです。
それを知ったヘパイストスは、怒りと悲しみをこらえつつ、じっくりと仕掛けを準備します。
しかもその罠がちょっとユーモラスで、まるで神様たちのドタバタ劇みたいなんですよ。
ヘパイストスが作ったのは、目には見えない鎖。
透明だけど決して破れない、鍛冶の神ならではの超高性能トラップです。
その鎖を、アフロディテとアレスが密会する寝室のベッドにこっそり仕込んでおきました。
準備万端──あとは“その瞬間”を待つだけです。
やがてふたりが、なにも知らずにベッドに横たわると……カシャッ!
仕掛けられていた鎖が作動し、全身がっちりホールド!
身動きすらできなくなった神々の姿は、それはもう滑稽で、
まるで古代ギリシャの喜劇をそのまま舞台にしたようだったとか。
ヘパイストスはすぐに他の神々を呼び集めて、
「さあ見てくれ、この浮気現場を!」と披露。
神々は爆笑の渦! 高貴なはずのアレスとアフロディテが、情けない姿でベッドに縛られているんですから、そりゃ笑わないわけがないですよね。
神話なのにまるで漫才のオチみたいな展開──
それがヘパイストスの、ちょっと切なくて、でも痛快な復讐劇だったんです。
ヘパイストスの罠は、神々の世界にも喜劇的な場面があったことを示している!
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ミダス王のロバ耳
音楽対決でパンを良しとした審判ミダス王に、アポロンがロバ耳を授ける瞬間を描く。
出典:Photo by Yair Haklai / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
ミダス王といえば、「触れたものすべてを黄金に変える」伝説が有名ですよね。
でも実はそれとは別に、ちょっと笑っちゃうようなユーモラスなエピソードも残されているんです。
その出来事とは──なんと「ロバの耳」を授けられた話。
悲劇というよりは完全に喜劇寄りで、ミダス王のちょっと間抜けな一面がのぞくお話なんですよ。
あるとき、音楽の神アポロンと、牧神パンが音楽バトルを開催。
どちらの演奏が上か、という対決の審判に選ばれたのがミダス王でした。
アポロンの演奏は繊細で技巧に満ちた芸術そのもの。一方でパンの音楽は素朴で陽気。
そしてミダス王が選んだのは……まさかのパン!
これにはアポロン、めちゃくちゃご立腹。自分の芸術が否定された気分だったんでしょうね。
怒り心頭のアポロンは、報復としてミダス王にロバの耳を授けてしまいます。
しかも、ただの耳じゃありません。両耳がまるっと、ほんとにロバそのものの形に。
自分の頭に立派なロバ耳が生えてきたことに気づいたミダス王は、あわてて帽子を深くかぶる生活に。
「人にはバレませんように…」と、必死に隠す日々が始まるわけです。
でも、毎度耳を整える床屋だけはごまかせませんでした。
秘密を知った床屋は、誰にも言っちゃダメ!と分かっていながら……我慢できない!
そこで彼は地面に穴を掘って、「王様の耳はロバの耳〜!」と叫ぶことでストレス発散。
ところがその声が土にしみ込み、いつしか風にそよぐ葦を通して、あっという間に広まっちゃったんです。
というわけで、ミダス王の秘密はバレバレに。 神話なのに「んなアホなw」と言いたくなるような、見事なオチですよね。
怒らせた相手が悪かったとはいえ、裁きミスからロバ耳になって、秘密が風に乗ってバラされるなんて……
なんともお茶目で、古代ギリシャのユーモアセンスを感じさせる一幕です。
ミダス王のロバ耳は、神話の世界にユーモラスな皮肉を添える物語だった!
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アポロンの牛を盗もうとするヘルメス
出典:Rijksmuseum / Wikimedia Commons CC0 1.0
ヘルメスといえば、神々の間を行き来する伝令役として有名ですが、
実はもうひとつの顔──盗みやいたずらの神としての一面も持っているんです。
彼の物語にはいつも、頭の回転の早さとひとクセあるユーモアがセット。
深刻な神話の世界に、ちょっとした「笑い」を忍び込ませてくれる、そんな存在なんですね。
信じられないことに、ヘルメスは生まれたその日からすでにやらかしてます。
なんと、兄のアポロンの飼っていた牛を、こっそり盗み出しちゃったんです。
まだ赤ん坊のくせに、大胆すぎる行動。そりゃあアポロンも怒るのも当然です。
でもヘルメスはただの悪ガキじゃありません。
すぐに竪琴という楽器を自分で発明して、それをアポロンにプレゼント。
なんとその機転と音楽の才能で、兄の怒りをうまくなだめちゃったんです。
後に「音楽の神」となるアポロンに、竪琴を贈ったのがヘルメス──というのは、
ちょっと素敵な“兄弟エピソード”でもありますね。
またある日、ヘルメスは美しい女性ヘルセに一目惚れ。
でもその姉アグラウロスが邪魔をしてきます。嫉妬なのか意地悪なのか、「妹は渡さない!」とばかりに、二人の仲を引き裂こうとするんです。
するとヘルメス、怒りのあまり魔法でアグラウロスを石に変えてしまうんです。
ちょっとやりすぎ? でもそこに、彼の気まぐれでブラックな一面がよく表れてますね。
ヘルメスのいたずらは、神々だけじゃありません。
人間相手にもちゃっかり悪さを働いてます。
旅人を道に迷わせたり、盗みをしたり、うまい話をちらつかせたり──
神なのに、どこか人間くさい抜け目のなさがあるんですよね。
真面目すぎる神々の世界にユーモアを添える存在──
ヘルメスはそんな“軽やかさ”を持った、どこか憎めない神だったんです。
つまりヘルメスのいたずらは、神々の中でも特に人間らしい狡猾さとユーモラスさを象徴していたのです。
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