ギリシャ神話における「夜の神」といえば?

ギリシャ神話における「夜の神」といえば、最も象徴的なのがニュクスです。ニュクスは「夜そのもの」を司る原初の女神で、その深い暗闇は神々にさえ畏怖されるほどの力を持っているとされます。彼女は、「混沌の神」カオスから生まれた最初の神々の一柱であり、暗闇がもたらす静けさと謎を体現する存在です。ニュクスはその名の通り、夜の空気や闇の力を象徴し、ギリシャ神話ではとりわけ神秘的で恐れられた女神でした。

 

ニュクスは多くの神々の母でもあり、その中には「眠りの神」ヒュプノスや「死の神」タナトスなども含まれます。彼女の子供たちは夜に関わる概念を持ち、それぞれが人間や神々の生活に影響を及ぼしているのです。ヒュプノスが眠りを司り人々に安らぎを与える一方で、タナトスは死を象徴するなど、ニュクスの影響力は多方面に広がっています。

 

Nyx, Night Goddess by Gustave Moreau

Nyx, Night Goddess by Gustave Moreau/1880年作
夜の女神ニュクスを神秘的かつ力強く描いた作品。
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)

 

また、ニュクスは神々の王ゼウスでさえ敬意を払ったとされる存在です。ゼウスがニュクスの子供に手を出そうとした際も、ニュクスの権威を恐れ、手を引いたという逸話が残されています。この話からも、ニュクスがいかに神々から尊敬され、畏れられていたかがわかりますね。その存在は「夜」という現象を超え、宇宙の秩序や調和の象徴として重きをなしていたのです。

 

ニュクスはただの「夜の女神」ではなく、夜にまつわる深い力と神秘を携えた重要な存在でした。ニュクスという神がいてこそ、夜がもたらす静寂や安らぎ、時には恐れが生まれ、神話の中でも欠かせない役割を担っていたのです。