The Owl of Athenaアテナーのシンボルであるフクロウが描かれた作品。知恵の女神としてのアテナーの象徴(出典:Wikimedia Commons CC BY 2.5より)
ギリシ
ギリシャ神話において、クジラはしばしば「巨大な海の怪物」として描かれ、神々が人間に試練や罰を与えるために遣わす存在として登場します。ギリシャ語で「ケートス(Κῆτος)」と呼ばれるこの海の怪物は、恐ろしい力と大きさを持つ生き物として、神話の中でさまざまな場面に現れるんです。
中でも有名なのが、エチオピア王女アンドロメダの逸話ですね。彼女の母であるカシオペアが、自らの美しさが海の精霊たちより勝ると豪語したことで、海神ポセイドンの怒りを買い、罰としてクジラ型の怪物ケートスが王国に送り込まれました。
ペルセウスがケートスと戦う古代コリントの黒絵式アンフォラ/紀元前575-550年
ペルセウスがケートスと戦い、アンドロメダを救出する場面を描いた古代のアンフォラ。
(出典:Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0より)
ケートスは、エチオピアの沿岸を荒らし、民を脅かす存在。カシオペア夫妻はポセイドンを鎮めるために娘アンドロメダを生贄として怪物に差し出そうとしますが、そこに英雄ペルセウスが現れ、見事にケートスを討伐。こうしてアンドロメダは救われ、ペルセウスとの愛を実らせることになったのです。
このエピソードからもわかるように、ギリシャ神話におけるクジラの存在は「神々の怒り」を象徴するとともに、英雄が試練を乗り越える舞台として描かれることが多いんですね。人間の傲慢さに対する罰や自然の圧倒的な力の象徴でもあったわけです。