ギリシャ神話には、魔女のような力を持ち、神話の中で大きな影響を及ぼす女性たちが登場します。特に有名なのはキルケとメーデイアです。この二人は「魔術」や「呪術」を駆使し、神や人間を自在に操る力を持つ点で、ギリシャ神話における「魔女」的な存在といえるでしょう。
まずキルケ(Circe)は魔術師として知られ、ホメロスの『オデュッセイア』に登場します。彼女は島に迷い込んだオデュッセウスの部下たちを豚に変えてしまうなど、呪術や変身の力に秀でたキャラクターです。しかし、オデュッセウスには特別な薬草を使われ、彼の知恵を認めて協力者としても振る舞います。その美しさと魔力で人を惑わしつつも、知恵や強さをもった人物には敬意を示す存在として描かれています。
Circe Offering the Cup to Odysseus/ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作
キルケーがオデュッセウスの仲間たちを豚に変えた後、オデュッセウスに杯を差し出す場面を描いた作品
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
そしえメーデイア(Medea)もまた、魔法に長けたキャラクターです。コルキスの王女である彼女は、英雄イアソンとともに金羊毛を手に入れるために魔法を駆使し、助けた恋人のために家族や祖国を捨てるという極端な行動に出ます。しかし、イアソンが彼女を裏切ると、激しい怒りから恐ろしい復讐を遂げるのです。こうして自立した女性としての強さと、復讐心からくる容赦のなさを併せ持った複雑なキャラクターとして神話に刻まれたんですね。
このように、ギリシャ神話の「魔女」的なキャラクターは、知恵と魔力、そして人間的な情熱や復讐心を併せ持った存在なのです。彼女たちは単なる「悪役」ではなく、神話を彩る強烈な個性の持ち主として描かれています。