ギリシャ神話における「呪いの神」といえば?

ギリシャ神話における「呪いの神」といえば、エリスネメシスがその代表格として知られています。エリスは争いと不和の女神として、さまざまなトラブルや不幸をもたらす存在で、ネメシスは報復や復讐を司り、正義を乱す者に厳しい罰を下す神です。二柱とも、ただの「呪い」ではなく、不和や罰を通じて秩序を守る役割も担っていたわけです。

 

まずエリスについてですが、彼女は争いや災いを引き起こす神として、特に「トロイア戦争」の発端を作ったことで有名です。エリスは結婚式に招かれなかったことを恨み、宴の席に「最も美しい者に与えられるべき金のリンゴ」を置き去りにしました。これが「パリスの審判」と呼ばれる出来事を引き起こし、最終的にトロイア戦争へとつながってしまいます。エリスの行動は争いを巻き起こすことで人々を試す存在として、神話の中で大きな役割を果たしているのです

 

The Goddess of Discord Choosing the Apple of Contention in the Garden of the Hesperides/1806年 ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー作
エリスが最も美しい女神に贈るために黄金の林檎を選ぶ場面を描いた作品。トロイア戦争の引き金となる美の争いの始まりを象徴。
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)

 

そしてもう一柱の呪いの神とされるのが、ネメシスです。ネメシスは復讐と報復の女神で、特に傲慢な者や不正を行った者に対して厳しい罰を与える存在です。彼女はギリシャ神話において、無秩序や驕りを戒めるために罰を下すことで、神々や人々に対する警告を示していました。ネメシスの役割は単なる呪いというより、秩序や均衡を保つための抑止力だったといえるでしょう

 

このように、エリスとネメシスは、ギリシャ神話の中で単なる呪いの象徴ではなく、世界の秩序と調和を保つ一端を担っていた神々なのです。

 

こうしてみると、呪いの神々もただ災いをもたらすだけでなく、秩序や正義を守るために重要な存在だったといえるでしょう。