ギリシャ神話で「美少年」といえば、ナルキッソス、ガニュメデス、そしてアドニスが代表的です。彼らは、その端麗な容姿ゆえに神々に愛される存在であり、さまざまな運命や悲劇に巻き込まれることとなりました。
ギリシャ神話の中で「吟遊詩人(アオイドス)」といえば、特に有名なのがオルフェウスです。オルフェウスは、竪琴(リラ)の名手であり、その美しい音楽と歌声で人々や動物、さらには自然まで魅了した存在です。
オルフェウスは、川の神オイアグロスと詩の女神カリオペの息子とされ、その音楽は神々にも評価されるほどのものでした。最もよく知られるのが、愛する妻エウリュディケを失った際の神話です。
Orpheus and Eurydice by George Frederick Watts
ジョージ・フレデリック・ワッツによるオルフェウスとエウリュディケ。オルフェウスが冥界から妻を連れ戻そうとする悲劇的な物語を描いている。
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
オルフェウスは、彼女を冥界から救い出すために竪琴を奏で、冥界の神々すらも心を動かしてしまいます。しかし、地上へ戻る途中でエウリュディケを振り返ってしまい、彼女を再び失うという悲劇的な結末を迎えるのです。
また、オルフェウスは「オルフェウス教」という宗教的な教義の中心人物ともされ、音楽の力を通じて死や冥界についての教えを伝えたとされています。このようにオルフェウスは、神話と宗教の両面で「音楽」と「詩」の象徴的存在であり、古代ギリシャの吟遊詩人の代表格といえるのです。