アキレスの性格が「激情的で勇敢」と言われる理由

アキレスと言えば、ギリシャ神話に登場する最強の英雄の一人ですよね。彼の性格が「激情的で勇敢」と言われる理由は、その数々のエピソードに見ることができます。とりわけ、トロイ戦争における彼の活躍は、まさにその性格を如実に表しているわけです。

 

アキレスは、彼の親友であるパトロクロスが戦死すると、激しい怒りと悲しみに駆られ、戦場に飛び出しました。 これにともない、トロイの英雄ヘクトールとの一騎討ちでは、その激情が最高潮に達します。彼はヘクトールを倒し、その死体を戦車に繋いで引きずり回すという行為に及びました。これほどまでに強い感情を表に出すことが、彼の性格を「激情的」と評される大きな要因なのです。

 

さらに『イリアス』の冒頭を彩るアキレスがアガメムノンに激怒したエピソードも有名です。トロイア戦争の最中、アガメムノンがアキレスの戦利品であるブリセイスを強引に奪ったことにより、アキレスは耐えがたい侮辱を感じ激怒します。アキレスにとって名誉は戦士としての存在意義そのものであり、それを侵害されることは耐え難い侮辱だったのです。この怒りは、彼が戦場を離れ、ギリシア軍が危機に瀕しても戦うことを拒否するという極端な行動に繋がります。アキレスの反応は、彼の感情が激情的性格を示すと同時に、古代ギリシア社会における名誉と個人の尊厳の重要性を浮き彫りにしています。

 

The Wrath of Achilles by Peter Paul Rubens

『アキレウスの激怒』1630年-1635年ピーター・パウル・ルーベンス作
アキレスがアガメムノンに向けた怒りを描いた作品
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)

 

また、彼の勇敢さは、常に最前線で戦う姿勢からも明らかです。アキレスは自らを危険に晒しながらも、敵を前に退くことなく立ち向かい、多くの敵を倒してきました。その勇気と英雄としての責任感が、彼を「勇敢」と讃える理由として挙げられるでしょう。