オルフェウスの性格が「芸術的で愛情深い」と言われる理由

オルフェウスの性格

吟遊詩人オルフェウスは、竪琴の音色で神々や自然をも魅了した芸術性を持っていました。また、愛する妻エウリュディケを冥界から救おうとする深い愛情も彼の性格を象徴します。このページでは、オルフェウスの芸術性や愛情、物語的意義を理解する上で役立つこのテーマについて、がっつり深掘りしていきます!

オルフェウスの性格が「芸術的で愛情深い」と言われる理由

古代ギリシャの物語には、剣や力で名を上げる英雄たちとはちがった、まったく別の輝きを放つ存在も登場します。その代表格がオルフェウス。彼は音楽と詩の力で世界を動かした、まさに芸術の化身のような人物だったんです。


彼が奏でる竪琴の音色は、ただ美しいだけじゃない。動物も、木々も、川の流れすらも立ち止まるほどで、なんと神々の心さえも揺さぶってしまうほどだったといわれています。


そして、そんな彼の人生に深く刻まれているのが「愛のかたち」。言葉や力では届かない想いを、音楽にのせて伝えようとした姿は、多くの人の心に残るものだったのです。


つまり、 オルフェウスが「芸術的で愛情深い」と言われるのは、彼の音楽がただの芸ではなく、人の心の奥底に響く“魂の表現”だったから──そう言えるんじゃないでしょうか。




竪琴の名手──芸術性が神々すら魅了した力

動物たちを魅了し竪琴を奏でるオルフェウスのモザイク(アルル、トランケタイユ出土)

竪琴を奏でるオルフェウス
円座に座したオルフェウスが竪琴を奏で、周囲の獣たちを魅了する古代末期の床モザイク。音楽の力で自然さえ従える象徴的主題。

出典:Photo by Carole Raddato / Wikimedia Commons CC BY-SA 2.0


オルフェウスは、詩と音楽の神アポロンの子、もしくはミューズ(芸術の女神)であるカリオペの子とも伝えられていて、生まれた瞬間から芸術の申し子のような存在だったんです。


彼が奏でる竪琴(リラ)の音色はただのメロディーじゃなくて、生き物の心を静めて、自然をも従わせてしまうような力を持っていたといわれています。


自然と動物を動かす音色

オルフェウスが竪琴を奏でると、鳥や獣たちは足を止め、木々もざわめきをやめる──そんな場面が神話の中にたくさん残されているんです。まるで森じゅうが彼の音楽に耳をすませているみたい。


それってつまり、芸術の力が争いではなく調和を生むっていう、ギリシャ神話らしい価値観の表れでもあるんですね。


神々さえ心を動かした

オルフェウスの音楽のすごいところは、それが神々の心にまで届いてしまうこと。オリュンポスの神々はもちろん、冥界の支配者ハデスや女神ペルセポネまで、彼の歌声に心を揺さぶられたと言われています。


芸術が神々をも動かす──そんな発想に、古代ギリシャ人の美に対する信仰の深さがにじみ出ているんですよね。


詩と音楽が結ぶ絆

オルフェウスの芸術は、ただのパフォーマンスじゃありません。彼が奏でる詩と音楽は人と人をつなぐ絆そのものでした。言葉にできない気持ちも、音に乗せればちゃんと伝わる。


芸術が人の心をつなぎ、魂に語りかけるもの──オルフェウスの存在は、そんな力を象徴していたんです。


つまりオルフェウスの芸術性は、世界や神々の心を震わせるほどの力として描かれているのです。



愛する妻エウリュディケへの深い想い──愛情深さの象徴

冥界からエウリュディケーを導くオルフェウス(コロー)

竪琴の力を使い冥界からエウリュディケを連れ戻そうとするオルペウス
出典:Photo by Jean-Baptiste-Camille Corot / Wikimedia Commons Public domainより


オルフェウスの神話のなかでも、とくに心に残るのが妻エウリュディケへの深い愛の物語です。彼女が命を落としたとき、オルフェウスはあまりの悲しみに竪琴すら奏でられなくなったと言われています。それは、ただの恋ではなく、魂の奥底まで響きあうような強い結びつきだったんですね。


エウリュディケの死

ある日、エウリュディケは野原を歩いている途中で毒蛇に噛まれて命を落としてしまうんです。あまりにも突然の別れに、オルフェウスは深く打ちのめされ、誰とも会わず、ただ彼女を想いながら歌い続けたと伝えられています。


その歌声はあまりにも切なくて、森を泣かせ、空の星々すら曇らせたとも言われているんですよ。


冥界への決意

でもオルフェウスは、悲しみに沈んで終わるような人じゃありませんでした。彼は愛する人を取り戻すために、命がけで冥界へ向かう決意をするんです。


生きたまま死者の国に足を踏み入れるなんて、ギリシャ神話の中でもかなり異例のこと。それでも彼は迷わず進みました。そこにはどんな運命にも立ち向かう、愛の力の強さがあったんです。


二人の間の絆

オルフェウスにとって、エウリュディケは心の奥で響きあうたったひとりの存在。彼女がいなければ、音楽も、人生も、空っぽになってしまう。


だからこそ、彼の行動はただの恋の話ではなくて、芸術と愛がひとつになった祈りのかたちとして、今も語り継がれているんですね。


つまりオルフェウスの愛情は、死すら超えて相手に届こうとする、究極の想いとして語られているのです。



冥界への旅──芸術と愛が導いた勇気ある行動

Orpheus and Eurydice by George Frederick Watts

エウリュディケの死を嘆くオルフェウス
冥界に降りたオルフェウスが「地上へ戻るまで、決して後ろを振り返ってはならない。」という条件を破った為、愛するエウリュディケが再び死の国に引き戻される刹那を描いたもの。
─ 出典:Wikimedia Commons Public Domainより ─


冥界に自分の意志で足を踏み入れた人間なんて、ギリシャ神話の中でもほんのひと握り。その中に数えられるのがオルフェウスなんです。しかもすごいのは、剣や武力に頼るんじゃなくて、音楽の力だけで死者の国の扉を開いたという点。それだけで、彼の特別さが伝わってきますよね。


冥界の門を開く音

冥界の入り口にたどり着いたオルフェウスが竪琴の音色を奏でると、あの恐ろしい番犬ケルベロスすら、その音に聴き入ってしまったんです。そして川を渡すカロンも、冥界の裁判官たちも、みんな彼の音楽に心を奪われて道を開けた。


力でも命令でもなく、芸術で道を切りひらいていく──その姿はまさにオルフェウスらしいですよね。


ハデスとペルセポネの心を動かす

やがて冥界の王ハデスと女王ペルセポネの前に立ったオルフェウスは、ただ一心にエウリュディケへの想いを歌い上げます。その音楽に心を打たれたふたりは、ある条件つきで彼女を地上に戻すことを許します。


その条件というのが──「地上に出るまで、決して彼女を振り返らないこと」。
……なんて厳しくて、残酷な試練なんでしょうか。


振り返ってしまった結末

地上までもう少し、というところで、オルフェウスは不安と焦りに耐えきれなくなって振り返ってしまうんです。その瞬間、エウリュディケは彼の目の前で再び冥界へと引き戻されてしまう……。


この場面は、愛と信頼、そして人間のどうしようもない弱さがぎゅっと詰まった、神話の中でも屈指の名シーンなんです。
誰よりも愛したからこそ、確かめたくなってしまう──そんな想い、きっと誰しもが共感できるはずです。


つまりオルフェウスの冥界への旅は、芸術と愛が導いた勇気の物語であり、人間の葛藤を映し出す神話的なドラマなのです。


オルフェウスって、剣や力じゃなくて、歌と竪琴で神々の心を動かしたのね。その旋律は愛するエウリュディケを思う気持ちそのもので、冥界さえも揺り動かすほど強かったわ。でも、最後に振り返ってしまった弱さもまた、人間らしい愛の形なのかもしれない…。オルフェウスが「芸術的で愛情深い」と言われるのは、その音楽と愛が、世界の理を一瞬でも越えてしまったから