ギリシャ神話には、神々を冒涜したり、掟を破った者に対して残酷な「罰」が科されるエピソードが多くあります。これらの罰はしばしば永遠に続くもので、神々の怒りと厳格さを物語っています。以下に、有名な残酷な罰エピソードをいくつかご紹介します。
プロメテウスの縛り、ピーター・パウル・ルーベンス作
ゼウスに罰されるプロメテウスを描いた絵画。プロメテウスは岩に縛られ、ゼウスに送られた鷲が彼の肝臓をつついている。この罰は永遠に続く、彼の肝臓は毎日再生され、再び食べられる(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)
プロメテウスは神々から火を盗んで人間に与えたため、ゼウスの怒りを買いました。罰として、プロメテウスはカウカソスの山に鎖で縛り付けられ、毎日ワシに肝臓をついばまれる運命に置かれました。肝臓は毎晩再生し、プロメテウスは絶え間ない苦痛を強いられたのです。この罰は「永遠の苦しみ」の象徴であり、ゼウスの厳格さと、神の力を人間に分け与えることへの禁忌を表しています。
知恵に長けたシシュフォスは、ゼウスの秘密を人間に漏らし、死を欺くなどの行為を繰り返して神々を怒らせました。罰として、彼は巨大な岩を山の頂上まで転がし続ける刑を受けましたが、頂上に到達すると岩は転げ落ち、再び最初からやり直さなければならないのです。この絶え間ない労苦は「無意味な労働」の象徴とされ、シシュフォスの永遠の罰は、神の秩序を乱すことへの厳しい戒めとして描かれています。
タンタロスは神々の秘密を漏らしたり、自らの息子を殺して供するという冒涜的な行為をしたため、冥界で永遠の飢えと渇きの罰を受けました。彼は美しい果実のなる木と水に囲まれていますが、果物に手を伸ばすと枝が逃げ、飲み物に口を近づけると水が引いてしまいます。この罰は、神を冒涜した者が永遠に満たされない欲望に苛まれることを象徴しています。
アテナイのイーカリオスは、ディオニュソスからワインの製法を教わり、人々に振る舞いましたが、初めてワインを飲んだ人々が酔いを毒と勘違いし、イーカリオスを殺してしまいました。その後、彼の娘エリゴネが自ら命を絶ち、ディオニュソスはその悲劇に怒り、アテナイ人に狂気をもたらしました。神に背く者への罰として、次々に家族を失った彼女の悲劇は、神の教えや贈り物に対する尊重の重要性を示しています。
若き狩人アクタイオンは、狩猟・貞潔の女神アルテミスが水浴びをしている場面を偶然目撃。彼女の怒りを買い鹿に変えられてしまったアクタイオンは、自分の猟犬たちに襲われて命を落としてしまうのです。この罰は、神聖な姿を冒涜する者に対する厳罰の象徴であり、神々への敬意と慎みの重要性を教えています。
このように、ギリシャ神話には、掟を破った者に対する残酷な罰が描かれ、神々の怒りや秩序の厳しさが強調されているのです。