ギリシャ神話における「豚」の意味や逸話

ギリシャ神話においては「豊穣」と「犠牲」の象徴であり、特に農業の豊かさや神への奉納に関わる重要な動物でした。古代ギリシャでは、豚は収穫祭や儀式の捧げ物として捧げられることが多く、土壌を掘り起こす習性から「豊かな実り」をもたらす動物としても敬われていたのです。

 

有名な逸話の一つに、オデュッセウスの冒険に登場する魔女キルケーがいます。彼女はオデュッセウスの部下たちを魔法で豚に変えてしまい、彼らを使役しました。このエピソードは、ギリシャ神話における豚のイメージを「呪い」や「人間の愚かさ」の象徴とも結びつけています。

 

Circe Offering the Cup to Odysseus/ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作
キルケーがオデュッセウスの仲間たちを豚に変えた後、オデュッセウスに杯を差し出す場面を描いた作品
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)

 

一方でオデュッセウスがキルケーの元を訪れ、知恵と勇気で仲間を救い出したことから、豚は「試練と変身」の象徴としても語り継がれるようになりました。

 

また、豊穣の神デメテルへの捧げ物として豚が供えられたことも多く、収穫祭では「繁栄」を願い、神聖な動物としての豚が重要視されていたのです。こうして、豚は豊かさや変容を表す一方で、罰や戒めを表す動物としても神話に刻まれています。