海と地震を司る神ポセイドンは、ギリシャ神話において力強くも気まぐれな存在として多くのエピソードに登場します。以下に、ポセイドンの代表的なエピソードをまとめました。
ポセイドンとアテナのアテナイ支配を巡る争い/ルネ=アントワーヌ・ウアス作
アテネ市の守護神として認められることを求めてポセイドンとアテナが争っている様子を描いた18世紀末の作品。
ポセイドンはアテナイの都市の守護神となるべく、知恵の女神アテナと争いました。どちらが都市にふさわしい贈り物を捧げられるかで勝負が決まることになり、ポセイドンは槍を地面に突き刺して泉を湧き出させましたが、その水は塩水で使い物になりませんでした。一方、アテナはオリーブの木を植え、人々に豊かな実りをもたらしました。結果としてアテナが都市の守護神に選ばれ、都市の名前も「アテナイ」とされました。このエピソードは、ポセイドンの荒々しさとアテナの知恵の対比を象徴しています。
ポセイドンは、英雄オデュッセウスに対して強い怒りを抱いていました。これは、オデュッセウスがポセイドンの息子である巨人ポリュペモスの目を潰したことが原因で、ポセイドンは帰路につくオデュッセウスに数々の困難を与え、海を荒らしました。ポセイドンの怒りによってオデュッセウスの帰還が遅れたことで、彼は家族と20年もの間離れ離れとなりました。このエピソードは、ポセイドンの気まぐれさと、家族を守る父としての一面を示しています。
トロイア戦争でもポセイドンはギリシャ軍の側について、神々の間での争いに積極的に参加しました。かつてトロイアの王ラオメドンに頼まれて城壁を築く手助けをしたものの、約束の報酬を支払われなかったため、トロイアに対して恨みを抱いていたのです。そのため、戦場ではトロイア軍に対して積極的に攻撃を加え、ギリシャ軍を援護しました。このエピソードでは、ポセイドンが神々としての誇りを重んじ、裏切りに対して厳しい姿勢を示す様子が描かれています。
ポセイドンは、クレタ王ミノスに白い雄牛を海から送り、その牛を神に捧げるよう命じました。しかしミノスはその雄牛をあまりに気に入り、自分のものにしてしまったため、ポセイドンは彼に罰を下すことにします。ポセイドンの怒りによって、ミノスの妻パシパエがその雄牛に恋するという呪いをかけられ、その結果、伝説の怪物ミノタウロスが生まれることになったのです。このエピソードは、約束を破る者に対するポセイドンの激しい怒りを象徴しています。
ポセイドンは海の神であると同時に、大地の神とも呼ばれるように、陸を支配し、地震を引き起こす力も持っていました。地上で不正や傲慢な行いが行われると、彼は地面を揺らし、自然の力で人々に罰を与えることがあったといいます。ポセイドンの荒々しい性格が自然災害と結びついて語られ、彼がいかに恐れられる存在であったかがうかがえますね。
このように、ポセイドンは海と大地の支配者として、時に神々に挑み、時に人間に罰を与える姿が印象的です。彼の気まぐれさや怒りは、ギリシャ神話の中で自然の厳しさや畏怖を象徴する存在として描かれています。