ギリシャ神話の「不和の林檎」伝説とは

ギリシャ神話における「不和の林檎」は、人々の間に争いを生む象徴として語り継がれてきた伝説です。この物語は、オリンポスの神々の間で起きた女神同士の争いから始まり、ついにはトロイア戦争という壮絶な戦争へと発展するきっかけとなりました。一つの林檎が、神々や英雄たちを巻き込む大きな悲劇を生むという構図は、多くの文化で不和や争いの象徴としても知られています。本記事では、不和の林檎がもたらした出来事やその背景、そしてその後の影響に迫ります。

 

 

伝説の登場人物

「不和の林檎」の伝説には、多くのギリシャ神話の登場人物が関わり、複雑な人間関係と神々の対立が描かれています。

 

エリス:不和と争いの女神で、結婚式に招かれなかったことへの怒りから「最も美しい者へ」と刻まれた林檎を投げ込む。
ヘラ:結婚と家庭を司る女神であり、ゼウスの妻。林檎を巡って女神たちの争いに加わった。
アテナ:知恵と戦略の女神。林檎を手に入れることで自らの栄光を証明しようとした。
アフロディテ:愛と美の女神で、林檎を奪い合う中で特に強く望んだ人物。
パリス:トロイアの王子であり、三女神の中から「最も美しい女神」を選ぶ裁定を任された。

 

伝説の背景

「不和の林檎」は、テティスペレウスの結婚式にまつわる出来事として語り継がれています。ペレウスは人間の英雄であり、テティスは海の女神であったため、この結婚式は神々の祝福を受ける盛大なものとなりました。しかし、不和と争いの象徴であるエリスだけが招かれませんでした。エリスはこの仕打ちに激怒し、式の最中に「最も美しい者へ」と書かれた金の林檎を投げ込みます。この林檎を巡って争いが勃発するのです。

 

この林檎を巡って争ったのは、ゼウスの妻ヘラ、知恵の女神アテナ、そして愛の女神アフロディテの三女神でした。三人はそれぞれ自分こそが最も美しいと主張し、林檎を手に入れることで美の象徴として認められようとします。しかし、ゼウスは女神たちの争いに対処しようとせず、パリスというトロイアの若き王子に「最も美しい者」を選ばせるという解決策を選びました。

 

伝説の顛末

「不和の林檎」を巡る争いの顛末は、トロイア戦争へとつながり、後の大きな悲劇の火種となりました。

 

パリスによる裁定

神々から選ばれたパリスに対し、三女神はそれぞれ林檎を手に入れるための贈り物を申し出ました。ヘラは権力と地位を与えることを、アテナは戦での勝利を、そしてアフロディテは最も美しい女性との愛を約束しました。パリスはアフロディテの約束に心惹かれ、彼女に林檎を与えたのです

 

トロイア戦争への発展

アフロディテがパリスに約束した「最も美しい女性」とは、ギリシャのスパルタ王妃であるヘレネでした。パリスはアフロディテの力でヘレネをスパルタから連れ去り、トロイアへと逃げ帰ります。しかし、ヘレネの夫であるスパルタ王メネラオスはこれに激怒し、ギリシャ中の王や戦士にトロイア攻撃を呼びかけます。

こうして始まったのが、トロイア戦争という10年間に及ぶ壮絶な戦いです。

 

争いがもたらした結末

トロイア戦争は、英雄アキレウスやトロイアの王子ヘクトルなど、多くの勇者が戦い、壮絶な死を遂げる戦争へと発展しました。戦争はギリシャ軍の勝利に終わりましたが、トロイアも徹底的に破壊されました。不和の林檎が発端となり、神々と人間の間に禍根が残されることになったのです。

 

The Goddess of Discord Choosing the Apple of Contention in the Garden of the Hesperides/1806年 ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー作
エリスが最も美しい女神に贈るために黄金の林檎を選ぶ場面を描いた作品。トロイア戦争の引き金となる美の争いの始まりを象徴。
(出典:Wikimedia Commons Public Domainより)

 

伝説の影響

「不和の林檎」は、争いと破壊の象徴として、後の時代に多大な影響を及ぼしました。文学や芸術作品において、不和の林檎は「小さな原因が大きな争いを招く」という教訓的なテーマとして描かれることが多く、この物語は争いの無益さや嫉妬の恐ろしさを伝えています。また、この伝説はトロイア戦争の原因を象徴する逸話として、ギリシャ神話の代表的な物語の一つとなりました。

 

以上、ギリシャ神話の「不和の林檎」伝説についての解説でした!

 

ざっくりと振り返れば

 

  • 女神エリスが金の林檎を投げ込み、争いを引き起こした
  • 三女神の争いをパリスが裁定した
  • パリスの選択がトロイア戦争の原因となった

 

・・・という具合にまとめられるでしょう。

 

ようは「不和の林檎は小さな火種が大きな争いを引き起こすことを象徴する物語である。」という点を抑えておきましょう!