夜空にふわりと浮かぶ魚座──二匹の魚がリボンのようなもので結ばれている、ちょっと不思議な星座ですよね。でもこの形には、ある美しい神話が隠されているんです。
登場するのは愛と美の女神アフロディテ、そしてその子エロス。
まるで母子のように寄り添うこのふたりは、ある日、恐ろしい怪物テュポーンの襲撃に遭ってしまいます。
そのとき、とっさの判断で二人は魚の姿に変身し、川へ逃げ込みました。
この変身が、命を守る最善の選択だったんですね。
逃げながらもお互いを見失わないようにと、二匹の魚はリボンのようなもので結ばれていた──
このエピソードが、今の魚座の形になって夜空に残されたんです。
つまり魚座は、「愛する存在を守るためにとった勇気ある変身」──その象徴でもあるんです。
ただの星の並びじゃなくて、愛と美を守る本能を語りかけてくる、やさしい星座なんですよ。
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ゼウスとテュポーンの戦い
巨人テュポーンに雷霆を投げつけるゼウスの場面
出典:A. L. Millin (author) / Creative Commons Public Domain Mark 1.0
オリュンポスの神々が空を支配していた時代、その平穏を引き裂くようにテュポーンという恐るべき怪物が姿を現しました。
この存在、ただの怪物ではありません。大地の女神ガイアと冥府のタルタロスから生まれた、まさに“地の底から湧き出る災厄”。
体は山よりも大きく、頭は百もあり、口からは炎を吹き出す──
そんな常識外れの姿に、あの神々ですら恐怖で身をすくめたといわれています。
まさに自然の暴走をそのまま具現化したような存在だったんですね。
テュポーンが天界に迫ると、神々はそのあまりの力に打ちのめされ、戦うどころか逃げるしかなかった。
普段は誰よりも勇敢なゼウスさえも、一時は退却を余儀なくされ、オリュンポスの秩序はガラガラと崩れていきました。
この描写は、どんなに偉大な存在でも恐怖には勝てない瞬間があるという、ギリシャ神話らしい人間味を帯びた一面でもあるんです。
このテュポーンの登場は、神々の世界だけでなく人間界にも影を落とします。
古代の人々は、地震や火山噴火といった自然災害を、テュポーンの暴れによるものだと考えていたんですね。
見えない自然の力を目に見える“怪物の姿”に置き換えることで、彼らは恐怖を言葉で語り、理解しようとしたのです。
このテュポーン襲来の中で生まれたのが、魚座の由来となる物語です。
混乱のなか、アフロディテとエロスのふたりは、川へ逃れるために魚の姿に変身しました。
しかも彼らはリボンのような絆で結ばれていて、離ればなれになることなく逃げ延びたんです。
つまり魚座は、混乱と恐怖の中から生まれた「愛と絆の物語」。
怪物の登場によってあぶり出された、守りたいもののために変わる強さが、今も夜空に光り続けているんですね。
つまり魚座の物語は、怪物テュポーンの脅威とともに始まったのです。
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アフロディテは「愛と美の女神」、そしてエロスは「恋の神」。
このふたりは母と子として強く結ばれていて、神々の中でも愛そのものを象徴する存在として知られていました。
でも、そんな彼らにも怪物テュポーンの脅威が迫ってきたんです。
神々が次々と逃げ出す中、アフロディテとエロスもユーフラテス川へと走りました。
でも水に飛び込んだだけでは、あの恐るべき怪物から逃げ切れるとは思えなかったんですね。
迫る恐怖の中で、ふたりはどうにかして生き延びる方法を探そうと知恵をしぼります。
ただ逃げるのではなく、「一緒に生き残る」という選択をするために。
そのとき彼らは魚の姿に変わります。
同じ姿になり、川の中を泳いでテュポーンの目を逃れたんです。
この変身は、単なる逃避ではなく、おたがいを守り合う絆の証だったのかもしれません。 恐怖の中でも離れず、同じ姿で困難に立ち向かう──そこに「愛が生む一体感」が表れているんです。
伝説によれば、変身した二匹の魚は紐や帯のようなものできつく結ばれていたといわれています。
そのリボンのような結び目には、「どんなときも離れたくない」という想いが込められていたんですね。
それは母と子の愛、あるいは誰かを守りたいという心そのもの。
この美しいエピソードが、やがて魚座という星座として夜空に残されたのです。
今も二匹の魚は、離れずに一緒に泳ぎ続けているんですよ。
つまりアフロディテとエロスの逃避は、愛と一体性を表す魚の姿に込められていたのです。
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魚座
怪物テュポーンからの2人の女神の逃避譚を由来とした星座絵。親子が川へ逃れるため魚に変じ、のちに結び紐でつながれたことを示す。
出典:Photo by Sidney Hall (author), restoration by Adam Cuerden / Wikimedia Commons Public domain
アフロディテとエロスが魚の姿となって逃れた物語は、やがて魚座として夜空に刻まれることになりました。
母と子が恐怖の中でも離れなかった絆は、星座になることで永遠の象徴となったんです。
星になったあとも、彼らの寄り添う姿は静かに語りかけてくるんですよね。「大切な人とは、どんな時でもつながっていられる」って。
夜空に描かれる魚座は、二匹の魚がリボンのような紐で結ばれている形で表されることがあります。
それはまさに、アフロディテとエロスが互いを見失わないようにと願った、あの物語そのもの。
星を見上げながら物語を思い出すことで、人々は「離れていても心はそばにある」と感じられたんですね。
時代が進むにつれて、魚座の意味は親子の愛だけにとどまらなくなります。
川を並んで泳ぐ二匹の魚は、次第に友情や信頼といった、人と人との絆全体を象徴する存在として広まっていったんです。
だから魚座は、「守りたい誰かがいる」という想いそのもの。 愛から始まり、やがてすべてのつながりの象徴へと成長していった星座なんです。
今の占星術でも、魚座は「共感」「優しさ」「思いやり」をあらわす星座とされていますよね。
それは単なる性格診断ではなく、あの母子の神話にちゃんと根ざしているんです。
魚座は、「人と人がつながることの尊さ」を教えてくれる、物語の記憶そのもの。
そして今も、夜空の中でそのメッセージを静かに輝かせているんです。
つまり魚座は、恐怖の中で生まれた愛と絆を永遠に伝える星座だったのです。
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