ギリシャ神話の重要な出来事を時系列順に紹介

ギリシャ神話における出来事

古代ギリシャの物語には、神々と人間の関わりを象徴する数々の出来事が描かれています。これらは世界の成り立ちや道徳的教訓を示す重要な物語として伝承されました。このページでは、神話の象徴的な事件やその意味、物語構造を理解する上で役立つこのテーマについて、がっつり深掘りしていきます!

ギリシャ神話の重要な出来事を時系列順に紹介

ギリシャ神話には、ほんとうにたくさんの物語がありますよね。でもそれらをバラバラの話としてではなく、歴史の流れとして時系列に並べてみると……ひとつの壮大なストーリーが浮かび上がってくるんです。


最初は神々の時代。ゼウスやポセイドン、ハデスたちが支配の座をめぐって争ったり、神々同士のドラマが繰り広げられたりする混沌とした時代です。


そこから舞台は英雄たちの活躍へと移っていきます。ペルセウス、ヘラクレス、オデュッセウス、アキレウス──数々の英雄が登場し、それぞれが試練や冒険を経験していきます。


そして物語はついにトロイア戦争という大決戦へ。神々も人間たちも入り混じって戦うこの戦争は、まさにギリシャ神話のクライマックスともいえるエピソードですね。


つまり、ギリシャ神話の核心は「神々の時代」から「英雄の時代」、そして「トロイア戦争」へとつながる壮大な歴史ドラマだったというわけなんです。




神々の時代

ギリシャ神話のはじまりは、神々と巨人たちの激しい戦いから幕を開けます。
まず描かれるのが、オリュンポスの神々ティターン神族との壮絶な戦争──それがティタノマキア
さらにそのあとには、神々と巨人族ギガースとの戦い、ギガントマキアが続いていくんです。


こうした戦いの末にゼウスを中心とするオリュンポス十二神が勝利をおさめ、ついに世界の支配者として君臨するようになります。


ティタノマキア

ティタノマキア
オリンポスの神々とティターン神族との壮大な戦いを描いた作品。力強い表現が特徴。
─ 出典:1600年頃 ジョアヒム・ウィテウェール作/Wikimedia Commons Public Domainより ─


ゼウスが父クロノスを打ち倒し、自分の兄弟姉妹たちと力を合わせて、ティターン神族と戦った十年にもおよぶ大戦争──それがティタノマキア。


戦いの末、ゼウスたちはティターンをタルタロス(冥界のさらに奥底)に封じ込め、新たな秩序を築き上げたのです。


「古い力を打ち破って、新しい秩序が生まれる」──
この構図こそが、ギリシャ神話全体を貫く大きなテーマのひとつなんですね。


ティタノマキアは、その序章にして最大級の見せ場でもあったんです。



ギガントマキア

ギガントマキア

─ 出典:1841年ミシェル・ドリニー作/Wikimedia Commons Public Domainより ─


ギガントマキアとは、オリュンポスの神々と巨人族(ギガース)がぶつかり合った壮絶な戦いのこと。


そもそものきっかけは、大地の女神ガイアが、自分の子であるティターンたちがタルタロスに封じ込められたことに怒りと悲しみを覚え、その復讐として巨人族を生み出したことでした。


この巨人たちはとにかく強力で、オリュンポスの神々にとっても油断ならない相手。地上と天界を巻き込むほどのスケールで戦いが繰り広げられます。


けれど最終的には、ゼウスの指揮のもと神々が一致団結し、さらには英雄ヘラクレスの加勢も加わって、巨人たちは打ち倒されました。


神々の秩序が、外からの脅威に打ち勝って確固たるものになる──このギガントマキアも、ティタノマキアに続く神々の支配を決定づける節目だったんですね。


つまり最初の時代は、神々が世界の秩序を確立するために戦い続けた時代だったのです。



英雄たちの冒険

神々の秩序がしっかりと築かれたあと、物語の主役は人間の英雄たちへとバトンタッチされます。
神々と人間が交わり、その中で生まれた英雄たちは、さまざまな試練や冒険を通して自らの名を歴史に刻んでいくんです。


ヘラクレスの十二の功業

Hercules and the Lernaean Hydra by Gustave Moreau

ヒュドラと戦うヘラクレス
ヘラクレスが、十二の功業の一つとして、レルネーの湖の怪物ヒュドラと戦う様子を描いた19世紀の作品
─ 出典:Wikimedia Commons Public Domainより ─


その代表格が、ゼウスの子として知られるヘラクレス


彼はあまりの怪力と勇猛さゆえに、女神ヘラから激しい嫉妬と怒りを買ってしまいます。その結果、贖罪として課されたのが十二の功業


たとえば、どんな武器も効かないネメアの獅子との死闘。
首を切っても再生する恐ろしい怪物レルネーのヒュドラとの戦い。
その他にも数々の不可能に思える難題が待ち受けていました。


それでもヘラクレスは、知恵と工夫、そして仲間の助けを借りながら、すべての試練を乗り越えていきます。


ただの怪力男ではなく、困難に立ち向かい続ける姿──
それこそが、ヘラクレスが人間と神をつなぐ英雄として語り継がれる理由なんですね。


力だけじゃない、信念と行動が英雄を形づくるんだということを、彼の物語は私たちに教えてくれているんです。



カリュドーンの猪狩り

カリュドーンの猪狩り
英雄メレアグロスと女英雄アタランテが凶暴な猪と戦う様子を描いた作品
─ 出典:バッティスタ・ドッシ作(16世紀)/Wikimedia Commons Public Domainより ─


この物語の発端は、王オイネウスが女神アルテミスへの供物を忘れてしまったこと。
それに激怒したアルテミスは、カリュドーンの地へ巨大な猪を送り込みます。


その猪は手がつけられないほど凶暴で、畑をめちゃくちゃにし、人々の生活を脅かしました。


そこで立ち上がったのが、各地から集まった英雄たち。
中でも注目されたのが、槍の名手メレアグロスと、俊足の女英雄アタランテ


戦いの中で、まずアタランテが見事に猪へ最初の傷を負わせ、続いてメレアグロスがとどめを刺し、ついに討伐に成功します。


神の怒りに巻き込まれながらも、人間の勇気と力で立ち向かっていく──
この「カリュドーンの猪狩り」は、ギリシャ神話の中でもとくに緊迫感のある冒険譚として語り継がれているんです。



アルゴナウタイの航海

アルゴー船の船出
─ 出典:コンスタンティノス・ヴォラナキス作/Wikimedia Commons Public Domainより ─


英雄イアソンに課されたのは、コルキスの地にある黄金の羊毛を手に入れるという、とんでもなく危険な使命。これは、彼が王位を継ぐための条件として突きつけられた試練だったんです。


そこでイアソンは、特別に造られたアルゴー号に乗り込み、旅に出ることを決意します。
仲間には、怪力のヘラクレス、音楽の魔法を操るオルペウス、そしてカストルとポリュデウケスといった名だたる英雄たち──まさにドリームチームが勢ぞろい!


航海の途中では、怪鳥が襲いかかる島や、岩がぶつかり合う恐怖の海峡シンプロガデスなど、命がけの試練が次々と襲いかかります。


そしてたどり着いたコルキス。そこでは、王女メデイアの助けを得て、火を吹く牡牛を使いこなし、羊毛を守る大蛇(竜)を眠らせることに成功。ついに黄金の羊毛を手に入れるんです。


仲間との絆と知恵で難関を突破していくこの冒険譚──
「アルゴナウタイの航海」は、ギリシャ神話の中でも群像劇的な魅力を持つ特別な物語なんですね。


つまり英雄たちの時代は、人間と神々が交わりながら数々の冒険を織りなした時代だったのです。



トロイア戦争とその後

神話の時代のクライマックスともいえるのが、このトロイア戦争です。
英雄たちが一堂に会し、神々までもが介入する、まさに人間と神が入り乱れる最後の戦い
この戦争をもって、神々の時代から人間の時代へと物語の舞台は移り変わっていきます。


テーバイの戦い

7将によるテーバイ攻め
オイディプスの息子たちによる権力争いを背景に、テーバイを攻める7人の将軍を描いた歴史画
─ 出典:1826年 アンジェリーク・モンジェ作/Wikimedia Commons Public Domainより ─


この戦いは、悲劇の王オイディプスの死後、息子たちであるエテオクレスポリュネイケスのあいだで王位争いが起きたことから始まります。


ふたりは交互に王になる約束をしていたのに、エテオクレスが約束を破って王座に居座ってしまうんですね。
怒ったポリュネイケスは国外から七人の将軍(七将)を率いてテーバイに進軍。


こうして始まったのが七将のテーバイ攻めという大戦争です。


けれど結果は……兄弟同士が剣を交え、互いに命を落とすというあまりに悲しい結末に。国は混乱し、王家には深い傷が残されることとなりました。


家族の情と権力の欲望がぶつかり合うこの物語は、ギリシャ神話の中でもとびきり重厚で、どこか人間の本質をえぐるようなドラマなんです。



パリスの審判

The Judgement of Paris by William Etty

パリスの審判
トロイの王子パリスがヘラ、アテナ、アフロディテの中で「最も美しい女神」を選ぶことを求められた神話を描く。最終的にアフロディテが勝利し、スパルタ王妃ヘレネの愛をパリスに約束した。─ 出典:コンスタンチン・マコフスキー作/Wikimedia Commons Public Domainより ─


物語の発端は、神々の宴に招かれなかった不和の女神エリスが投げ入れた「最も美しい者へ」と書かれた黄金の林檎でした。


これを巡って女神ヘラアテナアフロディテの三女神が争い、審判役として選ばれたのがトロイア王子パリス>です。


それぞれの女神がご褒美を用意してパリスを誘惑します。


  • ヘラは世界の支配権
  • アテナは知恵と勝利
  • アフロディテは世界一の美女ヘレネ


パリスは愛の誘惑に惹かれてアフロディテを選び、報酬としてスパルタ王妃ヘレネを奪い去ってしまいます。


これが火種となり、ギリシャ全土の王たちが一致団結してトロイアを攻めることになる── 「女神の争い」と「一人の王子の選択」から、歴史に残る大戦争が幕を開けるという、神話らしいドラマティックな展開なのです。



トロイア戦争の終結

The Burning of Troy by Johann Georg Trautmann

トロイの焼失
トロイア戦争の悲劇的な終結を描いた18世紀の作品
─ 出典:ヨハン・ゲオルク・トラウトマン作/Wikimedia Commons Public Domain<より ─


10年におよぶ激しい攻防の末、戦局を決定づけたのは「木馬の計略」でした。これは英雄オデュッセウスの発案とされ、ギリシャ軍が巨大な木製の馬を作り、その中に精鋭兵を潜ませたのです。


ギリシャ軍は敗走を装い、木馬だけを残して引き上げるふりをします。トロイアの人々はこれを勝利の証と信じて城内に引き入れ、戦勝の宴を開きました。


しかし深夜、木馬の中からギリシャ兵が現れ、外で待機していた軍を呼び寄せて一気に城を制圧します。


こうしてトロイアの都は崩壊し、壮大な戦争がついに終結。 戦術と策略が力を超えて歴史を動かす──まさにギリシャ神話の中でも屈指の名場面とされています。


つまり最後の時代は、神々と英雄が入り乱れて戦う壮大な戦争で幕を閉じたのです。



ティタノマキアからトロイア戦争まで、時系列でたどると物語がひとつの流れのように見えるのね。神々の戦い、英雄たちの冒険、そしてトロイアの滅亡…。ギリシャ神話の重要な出来事は「神の時代から英雄の時代、そして戦争の終焉」へと続く壮大な歴史の物語だったというわけ。